*やきもの作りの流れ(高さ約9cmの志野湯呑を例に)
The process of making pottery
The process of making pottery

土練り:Pugging

土は先ず荒練りします。これは硬さや種類の異なる土を均一にするのが目的です。不均一は作品の歪みの原因になります。

次に丁寧に菊練を繰り返します。
菊練とは土を廻しながら細かく折りたたむように練っていく方法で、土が重なった様子が、菊の花びら模様になるという意味のようです。よく練って空気を完全に抜いておかないと素焼した時に爆発や、亀裂の原因になります。


成形: Forming

轆轤びき、手捻り、紐作り、板作りなど

土が手に馴染むようになったら、形作りに入ります。
 

今回は轆轤びき


高台削り出し:Trimming

高台のあるものの場合は、作品を持ち上げても型が歪まない程度まで硬くなったら、逆さにして轆轤の中心に置きます。動かないようにしっかり止めてから、高台をカンナで削りだします。これは私のやり方で、削り台に乗せて削る方法もあります。

今回は轆轤びきの2日後に削りをする。


乾燥: Drying

乾燥の日数は、作品の大きさによって異なります。

この湯呑の場合は、2日陰干しの後、日向で3日間乾燥しました。これは5日目の状態です。


下絵付け:Underglaze Painting

下絵付けは素焼後に施す場合と、素焼前の生の土に施す場合とがあります。

この湯呑には素焼前に弁柄で絵付けをしました。



 
素焼:Biscuit firing
乾燥が終わった作品をぶつからないように入れ、
火入れ開始。
電気窯は内蓋と上蓋の二重になっています。
素焼は内蓋だけで行います。セラミック栓は使いません。

過程:Process

* 0〜100℃:弱電でゆっくりと1時間かけて残った水分を飛ばしながら昇温させる。
  その後20分ほど同じ温度で引っ張り、焙る。

* 100〜200℃:ゆっくりした上昇速度で1時間焼成。200℃で10分焙り。

* 200〜400℃:ゆっくりながら、前過程より少しスピードを上げて1時間半焼成。
     220℃辺りが土に含まれた水の遊離の勢いが一番強く、400℃位まで遊離水は
  土の中で頑張っている。
     この辺りまでは、急速に温度を上げるとひび割れなどを起こす危険がある。

* 400〜700℃:575℃くらいから素地土の分解が始まり、700℃までには土から陶へと変化する。
     400℃を越えると水分が抜けるので、これ以降に素地土にひびが入る心配は殆どない。
     したがって少しスピードを上げて2時間焼成後に窯のスイッチを切る。

* 全行程で約6時間掛かる。
*  スイッチを切った後、窯出し出来る温度まで冷ます。要する時間は10時間以上。
  200℃以下まで温度が下がれば取り出してもヒビは入らない。
 
素焼後の湯呑 : a tea cup after biscuitfiring
 


釉付け:Glazing

素焼後に釉掛けをした作品 : a tea cup after glazing

浸し掛け、廻し掛け(柄杓などに入れた釉薬を作品を廻しながら掛けていく)、たたき掛け(スポンジなどを使って)などの方法で。

この湯呑は志野釉薬のバケツに、ずぶ漬け(浸し掛け)しました。


本焼:Firing
志野釉の湯呑を1225℃まで還元焼成した場合の過程

・窯詰めの時、作品と一緒に還元剤の炭を入れる

・火入れ後、自然昇温させ、300℃で通気孔にセラミック栓をする。900℃までは通気孔に栓をしたまま焼成。
 所要時間3時間弱。(気温や湿度によって焼成速度はその都度微妙に変わる)

・900℃で窯内に空気を入れるため栓を抜く。木炭に着火し、窯の中は還元焼成の環境になる。
 そのまま温度を上げて1225℃までゆっくり焼成。所要時間約4時間。

・1225℃で再びセラミック栓をし、釉薬のブク(下記)への対処をする。
 一メモリ(25℃)下げ1200℃で練らし(15分〜20分焼く)。
 更に一メモリ下げて、1175℃で練らした後に窯のスイッチを切る。(所要時間約40分)
 今回の合計焼成所要時間は約7時間40分。

・火を止めてから12時間以上かけて窯の温度を下げる。窯の温度が200℃以下になれば、
 いつでも窯出しが出来る。
 
本焼後15時間経った湯呑

笹の葉を描いたつもりでしたが、上部は志野釉の下に埋もれてしまい、正体不明の絵となりました。
弁柄はある濃度があれば志野釉をはじきますから、濃さが足りなかったということでしょう。
こうした失敗を始終繰り返しています。


  本焼全般について

*還元焼成の場合(志野、天目、辰砂など)The case of reductin firing

電気窯での還元焼成には、還元剤として木炭を使う。(藁、木片、籾殻などを入れることもある)
 還元剤がヒーター線に触れると断線するので、付かないような配慮が必要。

釉薬のブク(釉薬が高温で煮え立ち、ブクブクと泡だっている状態)に対する
 配慮が必要なことがある。
 釉薬によっては高温で止めて、いきなり冷却に入ると、泡状態の釉薬がそのまま
 固まってしまうことがある。
 焼成温度より50℃くらい低い温度まで下げてから、焼成を終了することでブクを防ぐ
 ことが出来る。
 温度は2段階に分けて下げ、その都度練らし(15分〜20分同じ温度で焼く)を入れると
 結果が良いことが多い。
 この冷ましと練らしに40分前後掛ける。
 

*酸化焼成の場合(織部、黄瀬戸など)The case of oxidization firing

●還元剤(炭など)を使わない自然焼成
 栓は開けたままの状態で空気をたっぷり入れて焼成する。目標の温度まで一気に上げる
 ことが出来るので、還元焼成より焼成時間は短い場合が多い。
 目標の温度に達した後の、ブクに対する処理の仕方は還元の場合と同じ
 

*焼成時間:Firing Hours

●設定温度、焼成の仕方、窯内の作品のサイズの大小、内容量の多少、環境(温度、湿度)
 等々により焼成時間はその都度異なる。
 私の大型電気窯での本焼の所要時間は7〜9時間が目安(低温釉薬を除く)。


 湯呑の出来上がりが良くありませんでしたが、やきもの作りのおよその流れはお分かりいただけた
のではないかと思います。
 作り始めて10日目に湯呑が焼き上がりました。10日も掛かったと書きますと、何だか大仕事のように
聞こえるかもしれませんが、そんなことはありません。
素焼、本焼の日だけは8時間前後、家を留守には出来ませんが、温度と時間設定をきちんとやって
しまえば、後は殆ど窯任せです。時々チェックをするだけで、外出以外は何でも出来ます。
 火入れは作品が纏まった時を見計らって月に1〜2度します。作品は時間のある時に1つ、2つと
作りためておき、削りや手入れは後ですることも出来ます。乾燥を防ぐためにビニールできちんと
覆いをしておけば、冬なら数日、夏でも2、3日は適度な硬さが保てます。
 他のこともやりながら、自分のペースで楽しんでいます。
 

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