季節の贈りもの
11月の彩り
 空が澄み渡り、朝夕の風が少し肌寒く感ずるようになりました。鎮守の森から村祭りのお囃子の音が聴こえてきそうな陽気です。気候の穏やかな東京では楓もまだ殆ど染まらず、秋の草花も元気に咲き続けています。木の実だけは葉より一足早く色付いて、そこに小鳥たちが群がっています。お正月まで持ちこたえられる千両の実が殆どないのは、食べればおいしい実なのかもしれません。染まらずに散っていく落ち葉を集める日が続きます。カレンダーが残り一枚になり、心にちょっと寂しさと慌しさが忍び寄ります。

豊穣の季節
収穫の神への感謝の捧げもの(居間)

The Horn of Plenty (Cornucopia)

11月の玄関アプローチ

Welcome Wreath


11月の玄関
飾り棚

Thanksgiving day 


ショーケースから
Thanksgiving Ornaments
収穫祭の主役はターキー、シンボルは何と言ってもパンプキンです。ハロウイーンに続いてオレンジ色のかぼちゃが大活躍です。パイやプディングの材料として、そしてもう目鼻は付いていませんが、家の内外を飾るオーナメントとして。更にとうもろこし、ナッツ、ベリー、果実、ドライフラワー、麦藁、収穫物を狙う悪戯者のカラス、それを守る案山子、農夫などそれぞれに重要な役回りを持つオーナメントが顔を揃えています。



corn, cornucopia

crow, pumpkin


 pumpkin tea set, corn jelly


harvests, crow

藁人形


「keep off corns」

案山子

農夫

 
ターキーはご難続き
 Thanksgiving day(11月の第4木曜日)から週末に掛けての4日間はアメリカでは民族大移動の様相を呈します。1ヵ月後のクリスマスよりも宗教を越えている分多くの人々のお祭りという印象です。元々はイギリスを逃れて新大陸アメリカのプリマスに入植したピルグリムファーザーズが農業指導をしてくれた現地のマサチューセッツ族に最初の収穫物で感謝祭をしたことが始まりだそうです。でも今では、ターキーをはじめ秋の実りでご馳走を沢山用意して家族が年に一度集い、楽しむ行事と思っている方が多いようです。かってアメリカ大陸にはワイルドターキーが沢山いた由、ですからマッシュドポテトを添えて主菜はローストターキー(お腹に詰めるスタッフィングにそれぞれのご家庭の工夫がある由)デザートにはアップルパイ、パンプキンパイ、ナッツ入りクッキー、コーンプディング、アップルサイダー(シナモン入り林檎ジュース)などがどちらのお宅でも供されるこの日のご馳走です。この1ヵ月後のクリスマスのメニューも似たような内容ですからターキーにとっては受難の2ヶ月です。私たちもよくお招ばれで仲間入りさせていただきましたが、ターキーの大きさと、デザートの多さにいつも胃袋の小ささを嘆いたものでした。リクエストがあれば喜んで持って行ったものは餃子です。あれほどターキーを好きな方たちもこれには目が無くて、あっという間にお皿が空になるのが常でした。お節に飽きるようなものなのかもしれませんね。
 ターキーと言えば、以前娘とウォールデンポンド(ヘンリー・D・ソローが小屋を立てて住んでいた所です)に散歩に行った帰り、駐車場へと道を横切っていましたら、道の分離帯に大きな鳥が目を白黒させながら途方にくれています。みな車の速度を落とし窓から顔を出し、笑顔で通り過ぎて行きます。ちょうどサイクリングの人が通りかかりましたから「あれは何?」と訊ねましたら、その人も笑いながら「ワイルド・ターキーだよ」と答えてくれました。広々とした落葉樹林が連なるボストン近郊にはまだ野生動物が沢山いました。ラクーン、スカンク、ウッドチャック、いたちに鹿に栗鼠、人と動物が上手に共存していけるのも地面の広さあってのことなのでしょう。ワイルド・ターキーが今も健在と知って、心がほのぼのとしたことを思い出します。

 
庭の彩り


紫式部

千両

万両

吉祥草の実

おもと

綿の実

万両の葉

姫沙羅の葉


石蕗

遅咲き深山竜胆

山茶花

付録 11月の台北の空

12月の彩り

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